高音を求めていたら、本来の声に出会った話
- AI IMAI

- 3 日前
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「高い声が出るようになりたいんです」
そう言ってレッスンに来られた生徒さんがいました。
長年合唱でテノールを担当されていました。
オーディションで思うような結果が出ず、
高音が出るようになりたいという思いを持って来られたのです。
初回のレッスンで高音は出た
実は初回のレッスンから変化はありました。
それまで出たことのない高音が出たのです。
次のレッスンではさらに高い音も出るようになりました。
ご本人もとても喜ばれていました。
そして、「もっと続けてみたい」と思ってくださったようです。
でも私は別のことが気になっていた
ただ、私は少し違うことを感じていました。
確かに高音は出ています。
けれど、その音はまだ無理をして到達している音でした。
音程には届いている。でも自由ではない。
私は単に音が出ることよりも、
その人らしい魅力のある声が出ることの方が大切だと思っています。
だから、「もっと楽に、もっと豊かに歌えるはずだ」と思っていました。
少しずつ見えてきた本来の声
その後、約1年間。
月に1回のペースでレッスンを続けました。
回数にすると10回ほどです。
少しずつ体の使い方が変わり、声も変わっていきました。
そして私は次第に、この方の魅力は、テノールの方向ではなく、
むしろ豊かな中低音に、大きな可能性があるのではないか。
そんなふうに感じるようになったのです。
本気で変わりたいという決断
その後、ご本人は24回のモニターコースに参加されました。
アレクサンダーテクニークと声楽を組み合わせた継続コースです。
私はこの決断をとても重く受け止めました。
1年で24回というのは、「少し試してみよう」という回数ではありません。
本気で変わりたい。
そんな思いがなければ選ばない回数だと思います。
だから私も、その方が本来持っている魅力を引き出したいと思いました。
声の見方が変わる
アレクサンダーテクニークのレッスンが進むにつれ、
余計な力みが取れてくると、少しずつ、本来の声の響きが現れ始めました。
そして、私は、確信しました。やはり、どう聞いてもテノールではない。
そこで私は、バリトンやバスバリトンの格好良さと魅力についてお話ししました。
そして参考になる歌手の演奏も聴いていただきました。
すると、「すごく良いですね!」という反応が返ってきました。
それまでご本人の中では、高い声が出ることに価値があったのかもしれません。
しかしそのとき初めて、豊かな中低音にも大きな魅力があることを知ったのです。
そして、「次の合唱のオーディションはバスで受けてみようかな」
という言葉が自然と口をついて出ました。
私はその変化がとても印象的でした。
そして今回のレッスンで
今回はモニター9回目のレッスンでした。
私は部屋に入ってこられた瞬間から変化を感じました。
まず話し声が違っていたのです。
以前よりも立体的で、響きが豊かで、空間に自然に広がる声になっていました。
そして歌を聴いて驚きました。
中低音の響きがまるで別人のようになっていたのです!
それは無理に作った低音ではありません。
押し下げた声でもありません。
ただ、本来そこにあったものが現れた。
そんな感覚でした。
まるで地響きのように空間を震わせる響きでした。
実は、高音も楽になっていた
さらに興味深かったのは、
低音だけではなく高音も歌いやすくなっていたことです。
ご本人から、「高音も前より楽です」というお話がありました。
まだ最高音を更新したわけではありません。
けれど、高音への苦しさは確実に減っていました。
本来の魅力を受け入れたとき、声は変わる
私は今回の変化を見て改めて感じました。
人は自分が思っている以上に、「自分はこういう人だ」
というイメージの影響を受けています。
声も同じです。
高音を追いかけていた人が、本来持っていた中低音の魅力に気づく。
そして、「これも自分なんだ」と受け入れ始める。
そのとき、余計な力みが減り、体も声も変わり始めることがあります。
私の仕事は、新しい声を作ることではありません。
その人の中に最初からある魅力を、一緒に見つけていくことだと思っています。
そして、その魅力に気付いたとき、本来の声が輝き始めるのです。



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