「先生、歌もやってみようかな♪」~85歳の新しい挑戦~
- AI IMAI

- 6月14日
- 読了時間: 3分

「歩くのが少しでも楽になればいいな。」
今年の初め、85歳の女性がアレクサンダーテクニークのレッスンを始められました。
40代の頃の手術の影響で足が扁平足となり、長年歩きづらさを抱えてこられたそうです。
歩くと足が痛くなる。
転ぶのも心配。
外出もだんだん億劫になってきた。
だからこそ、
「いつまで生きるかわからないけれど、生きている間は健康でいたい。」
そんな思いで、週1回のレッスンを始められました。
最初の目標は、とても現実的なものでした。
少しでも歩きやすくなればいい。
転倒予防になればいい。
それだけでした。
歌の話は一度も出てきませんでした。
レッスンを重ねるにつれて、少しずつ変化が現れ始めました。
歩くことへの不安が減ってきた。
散歩が楽しくなってきた。
外出する機会も増えてきた。
そして何より、ご本人が驚いていたのは、
「今までできなかった姿勢ができるようになった。」
ということでした。
長年の癖で難しかった動きが、少しずつ楽にできるようになる。
身体が変わっていくのを、自分自身で感じられるようになってきたのです。
13回目のレッスンの時でした。
その方が、少し照れくさそうにおっしゃいました。
「先生、せっかくだから歌もやってみようかな。」
実はその方、小さい頃は「ひばり」と呼ばれるほど声が美しかったそうです。
ところが高熱が長く続く病気を経験し、それ以来、思うように声が出なくなってしまいました。
歌はいつしか人生の後ろの方へ置かれたままになっていました。
そこで、その日から少しだけ発声も始めることにしました。
ほんの数分の、小さなスタートです。
そしてレッスンが終わった後。
教室のピアノを見ながら、その方がぽつりと言いました。
「ピアノもやってみようかな。」
私は思わず笑顔になりました。
つい数か月前まで、
「歩くのが少しでも楽になれば。」
とおっしゃっていた方です。
それが今度は歌。
さらにピアノ。
新しいことに挑戦したい気持ちが、次々と湧いてきているようでした。
私は、この変化がとても興味深いと思っています。
歩きやすくなったから前向きになった。
それだけではないように思うのです。
今までできなかったことができるようになる。
身体が少しずつ変わっていく。
自分自身が成長していることを実感する。
すると人は、
「もう歳だから。」
ではなく、
「次は何をやってみようかな。」
と考えるようになるのかもしれません。
アレクサンダーテクニークは、姿勢を良くするためだけのものではありません。
身体を整えるためだけのものでもありません。
本来の自分の力を取り戻し、
「まだできるかもしれない。」
という自信を思い出していく学びでもあるのです。
85歳の女性が、歌に挑戦しようとしている。
そしてピアノにも興味を持ち始めている。
その姿を見ながら、私は改めて思いました。
人は、成長を実感すると前向きになる。
そして、その成長に年齢は関係ないのだと。
さて、次はどんな挑戦が始まるのでしょう。
私も楽しみに見守っています。



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